超適当なダミーヘッド作ってバイノーラル録音で遊んでみた。
年始に今年はもーちょっとマメに更新しますと書いていたのに、余裕で第一クォーター終了していたかおるです。お久しぶりです。
先日のM3-2017春に参加されていた皆様、お疲れさまでした。今回、久々の新作となる「 Season Note(シーズンノート)- Omnibus Reading Stories Ⅱ –」をリリースさせていただき、たくさんの方に手に取っていただけて本当に嬉しかったです。ぜひゆっくり聴いていただけたら幸いです。近日、改めてライナーノーツ的なこともこちらで書かせていただきたいなと思っています。
さて。
M3が終了し、ちょっと一息ついた今日この頃。
部屋の片づけもそこそこに、ふと部屋の片隅に転がしていたものを思い出しました。
そうだ、こいつをなんとかしよう。。。
ー 事の発端。
以前から「立体音響とかバイノーラルとかよくわからん!!モノラル最強!!」とか言ってたかおるですが、そもそもあまり真面目に試した経験がないから食わず嫌いはいけないよな…という思いがあったり、大きなきっかけとして「シーズンノート」に出演いただいた某浅見さんが出演されている耳かき音声作品を色々拝聴しているうちに「…これめっちゃ面白い…」と開眼したりで、見事に寝返ることになりました。
そこで「シーズンノート」のとあるシーンの環境音にバイノーラルで録音した音を使ってみようと思い立ち、10年くらい前に買ったけど全然使ってなかったバイノーラルマイクを引っ張り出し、雪も解けきらない冬の山に録音しに行ってみたのです。
が。
全っっっっ然、思ったような音で録れない…。
なんか無志向性マイクでそのまま録ったみたいな音。
そもそも何の予備知識も考えもなしに録りに行ったので当然といえば当然。
これはそれなりに準備しないと話にならないと痛感したので、M3終わったら色々試してみようかなと思ってました。
そしてM3終了。よしやるぞ。←イマココ
- 考察。
念のため先にお断りしておきますが、ほんと何も調べもせず根拠もなく思いつきでやってますので「ふーん。」くらいの感じでお読みくださいね。笑
自分が持ってるバイノーラルマイクは、耳にはめ込んで使うインイヤータイプの物。
買ったのが昔すぎてメーカーとか型番を覚えてません。
ただ、同じようなモデルの現行品がサウンドハウスで売ってるので、そのシリーズのすごい前の機種かもしれない。
感度はけっこう良いです。傾向的には近距離のニュアンスはすごく繊細だけど、1~2メートル離れると一気に解像度が落ちていく感じ。安いバイノーラルマイクって大体そういう特性なのかもしれないですが。。。
普通に耳につけて録ってもそれなりの音になるんじゃないかと思うけど、
もうちょっとリアルっぽくなったりしないかな…と考えてみた。
まず、ダミーヘッドにつけるのは何より手っ取り早い。
これは市販の安いマネキンで試してみることにする。
ただ、ちょっと気になることが。
耳っていわゆる外観的な”耳”から鼓膜の間までに外耳道が存在しますよね。
( フリーメディカルイラスト図鑑様より)
これの有る無しってけっこう大きいのでは…?と思ったのです。
もしかしたら製品の設計でそういう所もシミュレートして調整済みなのかもしれないけど、測定までやろうとするとめんどいので今回はそういう調整はたぶんされてないだろうという前提。
もしされてたらゴメンナサイ。とりあえずこの穴を追加することで変わるのかを試してみたい。
あと、疑似的に穴を設けた場合、耳の有る無しでも音が変わるんじゃないかなと思ったり。
パラボラではないけど、音を集める指向性は耳が担っている気がするから、そこも試したい。
というわけで、要素は2つ。
・耳の穴を作る
・耳をつくる
これを何らかの形で作って試してみることにしました。
ー DIY。
高校時代、DIYは「だって、家で、やりゃいいじゃん」の略だと主張していました。…別に家じゃなくてもいいよね…。
まず材料。
10年ほど放置してたバイノーラルマイク。一応、動作は問題なし。
マネキン。ハンズで900円ほどで購入。
以上。
このマネキン、こんこんたたくと内側が空洞っぽいので、
こいつを真っ二つにしてマイクを内蔵&耳の穴をあけることにします。
というわけで。
切ります。
なぜ木工用ノコギリなのか。
これしかなかったからです。
うまくいったらスチロールカッター買おう。
切りました。
分かってたけどスチロールの破片でえらいことに。。。
断面図。予想通り、いい感じに空洞になっていました。
並べるとこんな感じ。左が後ろ頭側、右が顔側。
スチロールの厚みは2cm程度。ちょうどいい感じじゃないでしょうか。
次は耳の穴あけます。
手っ取り早い方法を考えた結果、こいつで空ける。
切ったときもだけど、なんかちょっとドキドキ。。。
なんかふおぉぉぉっっ!!て嫌な鳥肌立ったので、自分はたぶんサイコパスではないんだろうと安心しました。
ちなみに定規は「ここは空洞じゃないよ」っていう目印として挟んでます。
耳の穴あいたよ。
こんな感じ。
次は耳をつくります。
紙粘土とかで作ろうかと思ったけど、買いに出るのがめんどくさかったので紙で作ります。
数枚切って、
つまようじを数本、セロテープで張り付けて、先っぽのこして切る。
2組。
これを、
ぶっ刺す。
耳できたよ。
我ながらなんというか適当すぎる。
最初、100均で売ってるジョークグッズの耳を使おうと思ったけど、大体あれって片耳タイプしかなかったり異様にデカかったりするので断念。ハンズとか通販で耳の模型売ってるけどめっちゃ高い。。。ちゃんと作るならやっぱり粘土かなぁ。
ちなみに今回紙で作ってますが、音が変に反射しちゃうと思うので、真面目に作るならそれなりに吸音効果のあるもので作ったほうがいいんじゃないかと思います。
次はマイクを仕込むよ。
耳の穴に合わせて、バイノーラルマイクをはりつけ。
こんな感じ?
できた。
あと、ちょっと思い付きで、胴鳴り?ではないけど、
多少なり相手の声が自分の頭の中で響きとして鳴って、それが聴こえてる要素もあるんじゃないかと思い(※一切根拠はありません)、
そんな感じの音を重ねたら何か変化あるかなぁと「胴鳴り用マイク」みたいなものも入れてみる。
マイクはKORGのMR-1買ったときについてきた付属マイクを使います。
当時からレビューでめちゃ音質悪いと言われてたけど、MR-1の性能に対してショボイだけで、それなりに収音能力はあります。
できた。うぇーい!
閉める。
見た目が残念すぎる。
そこはもう気にしないことにします。
ここまでの所要時間、約40分ほど。
ここで、ハタと気が付く。
頭の中、おもいっきり空洞のままだから、たぶん隙間から入り込んだ音とか空洞反射がけっこう入りそうな気がする…。
まあでも今回お遊び実験なので今度やるときは中に綿かタオルでも詰めてやってみることにします。
これで、バイノーラルマイクをROLAND R-09HRに。
胴鳴りマイクをKORG MR-1に挿します。
準備おっけー!
と、ここでトラブル発生。
KORGのMR-1、あまりに使ってなさすぎて回路のショートでも起こしてるのか、録音はできるけどものすごいノイズが乗ってて聴けたもんじゃない音になってる…。
電源の取り方変えたり別のマイクでやってみてもブーーーンって音が鳴ってるから、これたぶん故障…。
他にプラグインパワー給電できてステレオ入力できるレコーダーがないので、今回は胴鳴りマイクは断念してバイノーラルだけでやります。 (;ω;)
さて、実際に録音。
録音にあたり、呼びつけて囁いてもらえるような女子の役者友達など都合よく居るわけもないので、かおるが自分でしゃべってます。お聞き苦しいかと思いますがご了承ください。。。
その前に、そもそも今回のマネキンみたいに「バイノーラルマイクの間の遮蔽物」が有るのと無いのでどの程度音変わるのか?っていうのを簡単に試してみました。
かなり乱暴なセッティングですが、単純に宙に浮かせた状態と、何かしらの遮蔽物があるのかで録音してます。
※ちなみにすべての録音は24Khz/48bitで録音したあと、ProToolsで編集して書き出してからAudioGateでMP3(320kbps)に変換してます。エフェクトは一部ノーマライズをかけた以外は何も使っていません。
その① 遮蔽物なしの宙に浮いた状態
その② 遮蔽物を入れてみた状態
●バイノーラルマイクの間に遮蔽物の有る無しで変わるのか。
めっちゃ吹かれてますごめんなさい。
ちょっと極端な感じにしてるのもあると思いますが、やっぱり近づいてしゃべったときに遮蔽物があると指向性がはっきりしますね。当然といえば当然ですが、両耳につけるタイプは何かしらの遮蔽物が有る方がよいようです。。。
さて、ここからいくつかのパターンをしゃべてみました。
まず、この耳あり+耳の穴セッティングの音声と、
本来想定されている頭の外側につけた場合でどれくらい音が変わるのか試してみました。
● バイノーラルマイクをマネキンの外側につけた場合と、耳の穴の中に内蔵した場合で音が変わるのか。
やっぱり少し音が変わりますね。外側につけた時より、中に仕込んだ場合はダイナミックレンジが狭くなって、そのかわり少し音が前に出てくる感じでしょうか。
ちなみにアナライザーでざっくり見てみると、
上がマイクを外につけた場合。下がマイクを中につけた場合。
耳の中につけると1~2KHzあたりが若干下がって、代わりに2.5Khz付近にあったディップと10KHz近辺がちょっと持ち上がってますね。
あと位相が若干安定するのかな?
とりあえずそれなりに違いは出てくるようです。
あと、バリエーションの音源を。
● バイノーラルマイクを耳の穴の中に内蔵して、後ろからしゃべった場合。
後頭部に向けて喋りかけてみました。もうちょっと後ろから声が聞こえる感が出るかなと思ったけど、さすがにそこまで違いは出ませんでした。でもこれはこれで面白いですね。近寄ってしゃべったときの音が前から喋った音より好みです。
真上は…どうなんだろう。一応上から音が来てる感はあるような気がします。
● バイノーラルマイクを耳の穴の中に内蔵して、外付けの耳の有る無しで音が変わるのか
…これはほぼ変わらないって言っていいくらい変わらないですねw もうちょっと真面目に作り込んだ耳なら変わるかもしれないけど、思ったほどの違いは出なかった感じです。残念。
と、こんな感じの音になりました
正直、想像してたよりは変化がなかったかなーという感じでした(ーー;)
ただ、音色の違いとして使い分けでみると面白いかもしれないですね。部屋の出入りや動作も含めたダイナミックレンジの広い音はマネキンの外側で、声を押し出して集中させた感じで録りたい場合はマネキンに内蔵で録るとか、シチュエーションや演出、演者さんの声質によって変えてみると、リアルな感じに作り込めるかもしれません。
あと、今回はわりと低音成分多めのかおるの声で録音してるので、女性の声など高音域だったらまたニュアンスや雰囲気が変わるかもしれません。その辺はまたいずれかの機会に。。。
なんとなくイメージが掴めてきたので、引き続き、ちょこちょこ弄りながらバイノーラル録音で遊んでみたいと思います。
みなさんも良い録音ライフを。